筑波大学
田中文英研究室

JA

研究内容

いつもそばにいて、わたしたちの孤独や不安、痛みなどを和らげてくれて、わたしたちが日々善く生きていくことを助けてくれるエージェント技術の創出が目標です。

OMOY: 重り運動で「想い」を伝えるロボット

ロボットやAIスピーカーなど発話機能を持った製品が普及してきました。しかし、こうした機械の発話音声は、人の声と比べると平坦で、メッセージに「重み」を感じないという声もあります。そこで我々は、ロボットの内部に重りを組み込み、発話に合わせて重りを動かして、物理的な重み感覚をユーザーに与えることを試みました。ユーザーはロボットを手に持つことで、発話に合わせたロボットの感情や意図を内部重りの動きから感じ取ることができます。

実験の結果から、発話に合わせて内部重り運動が提示された条件では、発話のみが提示された条件と比べ、ロボットに対して感じる真剣さの度合が有意に高まることが分かりました。さらにはユーザーがイライラする場面における怒り抑制効果や、非があった他者に対する許しの気持ちも高まることが示唆されています。

本技術は、人間がAIやロボットと親密にコミュニケーションしていく社会や、そうした技術を介して人と人がコミュニケーションしていく社会において、「想い」や「感情」などの要素を効果的に伝達することに役立つと期待されます。

野口 洋平,田中文英.体重移動により感情や意図を表出するハンドヘルド型コミュニケーションロボットOMOY.第34回人工知能学会全国大会,2020(論文PDF

Yohei Noguchi and Fumihide Tanaka. OMOY: A Handheld Robotic Gadget that Shifts its Weight to Express Emotions and Intentions. CHI, 2020(論文PDF

Yohei Noguchi, Hiroko Kamide, and Fumihide Tanaka. Weight Shift Movements of a Social Mediator Robot Make It Being Recognized as Serious and Suppress Anger, Revenge and Avoidance Motivation of the User. Frontiers in Robotics and AI, 2022(論文PDF

Reliebo: 人の痛みや恐怖を和らげるウェアラブルロボット

ワクチン接種など医療処置中の痛みや恐怖を軽減できれば、広く人類に歓迎されるに違いありません。そこで我々は、ユーザーが手にはめて握ることにより、痛みや恐怖を和らげられるウェアラブルロボットReliebo(リリーボ)の開発を進めています。Relieboは柔らかな素材で覆われており、膨張・収縮可能な三つのエアバッグを内蔵しています。これにより、握ることに加え、外から大きな手で握られている感覚などをユーザーに与えることができます。

熱刺激装置を用いた実験の結果から、ロボット着用条件では、痛み値が有意に減少していたことが分かりました。さらに、ユーザーの握りに反応してロボットが握り返す動作を行う条件では、唾液中のオキシトシンが減少する傾向がありました。オキシトシンは、人のストレスレベルの低下に沿って減少することが知られているホルモンです。これらの他、8種類の具体的注射体験について尋ねるアンケート結果から、本実験参加後に参加者の注射に対する恐怖心が有意に低下したことも分かりました。

我々は今後、こうした実空間上のロボットを仮想現実(VR)/拡張現実(AR)など仮想世界上の手法と融合し、より広い場面や用途で人の痛みや不安を和らげていくことを目指していきます。

イム ユチャン,田中 文英.握ると同時に握られるロボットハンドを用いた人の痛み軽減の試み.第34回人工知能学会全国大会,2020(論文PDF

Youchan Yim and Fumihide Tanaka. Development of an Inflatable Haptic Device for Pain Reduction by Social Touch. HRI, 2021 [Best Student Robot Design受賞](論文PDF

Youchan Yim, Yohei Noguchi, and Fumihide Tanaka. A wearable soft robot that can alleviate the pain and fear of the wearer. Scientific Reports, 2022(論文PDF

その他の研究プロジェクト

TherMoody:
体表温度可変なロボット
高齢者と家族をつなぐ
社会的仲介ロボット
触ると柔らかさの変わる
ソフトロボット
所作と共に香りを残す
ロボット
子どもの英語学習用
Pepperアプリ開発
ケア・レシーバーロボット
による子どもの教育支援
世界の子どもたちをつなぐ
遠隔ロボットシステム
幼児とロボットの
インタラクション
マルチタスク強化学習
ライフロング強化学習

FTMP(First Two Months Project)

田中研に卒研配属されると、最初の二か月間で自由課題の研究プロジェクトを行います。研究室のテーマにとらわれず各自が自由にテーマを設定し、実装から最終発表までをアドバイスを受けながら独力で行います。
過去のプロジェクトはこちらから