聞き上手な印象を与えるコミュニケーションロボットの開発
[背景]
話すことには心身の健康や主観的幸福感を向上させる効果があることが知られており、日常的に他者と会話することが望ましい。日常生活の中で想定される一対一の会話では、二者の発話量がつり合っている場合とつり合っていない場合がある。発話量のつり合っていない、つまり一方的な会話に注目すると、このとき話し手にとって重要なのは「話を聞いてもらっている満足感」であり、聞き手の意見は必要とされていない。また、一方的な会話では聞き手が発話量の不均衡に対し不満を感じることも想定される。これらの問題は、話し手に満足感を与える「聞き上手な」ロボットを会話相手にすることで解決できると考えられる。
[目的]
本プロジェクトでは、一対一かつ聞き手の意見を求めない話し手主導の会話において、話し手に満足感を与えるコミュニケーションロボットの開発を目的とする。
[手法]
Softbank Robotics社のヒューマノイドロボットPepperを使用した。
ロボットが話を聞いていると感じさせるため、以下の要素を実装した。
- アイコンタクト・視線外し・まばたき
- あいづち
- 話し手が使用した単語の言いかえ
- 特定単語に対応した受け答え・ポーズ
[実験]
実装した各要素の効果検証と更なる要素探索のため、評価実験を行った。被験者には開発したロボットと会話してもらい、アンケート調査による評価を行った。このアンケートでは実装した四要素や実装してほしい要素、人よりもロボットに話しやすいと思う話題について調査した。被験者は成人三名(うち男性二名、女性一名)で行った。
[結果]
アンケート調査より、以下の評価が得られた。
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- アイコンタクト・視線外しについて
ちょうどよい、聞いてくれている気がした、まばたきには気が付かなかった
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- あいづちについて
ちゃんと聞いてくれている気がした、激しい同意を感じた、 タイミングが悪いときに困った
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- 単語の言いかえについて
特に感じられなかった、二回同じことを繰り返されるとプログラムを感じてがっかりした
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- 特定単語に対応した受け答え・ポーズについて
ポーズは特に感じられなかった、意図が分からなかった
また、ロボットに聞いてほしい話題としては「楽しかったこと」、「ネガティブな内容(愚痴など)」、「自分の評価が下がりそうな話題」、「恥ずかしい話題」が挙げられた。
[考察]
上記の結果から、次のことが言える。
- アイコンタクト・視線外しについては効果あり、まばたきは効果が見られなかった
- あいづちは効果あり、ただしタイミングによっては逆効果を与えた
- 単語の言いかえについては十分に検証ができなかった
- 特定単語に対応した受け答え・ポーズについては十分に検証ができなかった
あいづち、単語の言いかえ、受け答え・ポーズについては、音声認識の精度の悪さが大きく影響していると考えられ、今後の改善が必要である。
また、ロボットにはネガティブな話題を聞いてほしい傾向があると考えられ、これは今後の開発の際に話題の絞り込みに活用できる。
[まとめ]
本プロジェクトでは、一対一かつ話し手主導の会話において聞き上手なロボットをつくることを目的とし、大きく四つの要素を実装して評価実験を行った。今回の実験では、聞き上手に感じさせる要素を選んで実装することで、内容を理解していなくても話し手に満足感を与える可能性が示唆された。今後は音声認識の精度改善、要求仕様の実装(あいづちのタイミング、発話を譲る)やネガティブな話題への対応を課題とする。