筑波大学
田中文英研究室

JA

2016-kasai

ヒューマンロボットインタラクションにおいて忘却機能が与える影響について

【背景と目的】

近年、家庭用ヒューマノイドロボットの台頭などにより、人々とロボットが触れ合う機会が多くなってきている。それに伴い、人とロボットとの長期的インタラクションを生成する技術の需要が高まっている。一方で子ども教育の分野において、人に教えることで自らの学習効果が高まるLearning by Teaching の考えを用いて、子どもにロボットを教えさせるケアレシーバー型ロボットがある。

本プロジェクトでは、次の2点を目的とする。

  1.  自力でケアレシーバー型ロボットを実装し、知見を深めること
  2.  事前研究で子どもの興味の誘因に効果が示唆されている「忘却機能」が与える影響について調査すること

【手法】

ソフトバンクロボティクス社のヒューマノイドロボットPepperを用いてケアレシーバー型ロボットを実装し、英単語学習を行う。

忘却機能実装のため、以下の式で表した記憶率を実装した。

 R : 記憶率 [ % ]

 C : 記憶を呼び出した回数

 n : 記憶している単語の数

 α, β : 定数

これを個々の単語で設定し、学習内容の確認をされたときの応答動作を以下の様に決定する。

 70~100% : 正しい答えを言う

 50~70%   : 悩む素振りをした後、正しい答えを言う

 0~50%     : 誤った解答を行い、人に再教示を促す 

【実験】

本プロジェクトでは、従来型のケアレシーバー型ロボットと提案した忘却機能を実装した提案型の2種類を比較する。

対象は成人3名。まず実験の流れについて説明し、次に忘却機能を実装していない ” 従来型 ” 、忘却機能を実装した “提案型” の順番でインタラクションを行ってもらい、最後に聞き取り調査を行った。

【結果】

聞き取り調査の結果から以下の意見が得られた。

<肯定的な意見>

<否定的な意見>

【考察】

以上の意見から次のことが言えると考えられる。

【まとめ】

 本プロジェクトでは、ヒューマンロボットインタラクションにおいて忘却機能が与える影響について、ケアレシーバー型ロボットを題材に調査を行った。その結果、忘却機能が長期的インタラクションに繋がるといった事前研究で示唆されていた内容を支持できる結果が得られた。しかし、忘却機能を実装したことにより新たな問題点が明確になった。今後は、本実験で明確になった点に注意して進めていく。

【感想

 これから研究生活を送っていく上で、テーマ設定から最終報告までを自力で行った本プロジェクトは、どのように研究を進めていくかを学べたという点でとてもよい勉強になった。また、実際に実機を作って、実験を行うことで新たに見えてくることも多く、そこで得られた結果は当然として、実際に作ってみることの重要性も学ぶことができて良かったと思う。