筑波大学
田中文英研究室

JA

ケアレシーバーロボットを用いた教育支援

< 科研費・若手研究(A) 採択研究課題(H23~H26)>

従来提案されてきた教育支援ロボットは、生徒を教える「教師役のロボット(下左図)」でした。それに対して我々は、生徒に教えさせるタイプのロボット(ケア・レシーバー型ロボット:下右図)を提案し、その有効性を様々な実証実験により確かめています。

従来型の教師役もしくはチャイルドケア・ロボットは倫理上の問題点も指摘されており、また、生徒は受身の学習になりがちです。それに対してここで提案するケア・レシーバー型ロボットは、生徒にロボットを教えてもらい、結果として教えることによる学習(learning by teaching)を引き起こすもので、真逆の発想に基づくものです。

我々の過去研究(2007年のPNAS論文参照)によって、子どもたちはロボットのお世話をすることが大好きで、自発的かつ興味もとても長続きすることがわかっています。このケア・レシーバー型ロボットは、その性質を教育支援に活かしたもので、意図的に不完全な(弱い)ロボットを導入することによって、周囲の人間のパフォーマンスを引き出そうとしています。

我々は実際につくば市内にある子ども向け英会話教室にてフィールド実験を行いました。人間の教師による通常の英単語学習の授業に、生徒の子どもたちと混じって出来の悪い(教師の出す問いを誤答したりする)ロボットを導入したところ、子どもたちからロボットへの教示が数多く発生し、その結果、子どもたち自身の英単語学習も促進されることを確かめました。

このアイデアは英単語学習以外の様々な教育の場面にも応用可能であり、かつ、倫理的な問題も少ないとのことで、広い分野の研究者・専門家や現場の教師たちから高く評価されています。

近年、各国の研究者たちによって、障害を持つ子どもたちの学習やセラピーへの適用も始まっており、国際会議では最新成果が毎年のように報告されています。

より詳しい内容については、以下の論文を御参照下さい。

(2017.10.2 更新)